国土7割が森林の日本で、なぜウッドショックが起きるのか?
今月に入ってFAXが届いた。4月から国産材木が値上がりする。昨年から耳にしてきた“ウッドショック”の始まりだ。これはアメリカでテレワークが広まり、コロナ禍での金利の引き下げで住宅需要が高まったのが要因だと言われている。中国の大量の木材消費も大きい。「木材価格の高騰・急騰」を示す言葉だ。
私は江戸から続く五代目箱屋常吉の木箱職人として感じていることを記したい。
石油のない日本で「オイルショック」はわかるが、なぜ日本で「ウッドショック」が起こるのか?
7割輸入に頼る、木材自給率の低い「木の国日本」
日本の山林は国土の約67%を占めており、他にも天然林、人工林、竹林と莫大な木材資源を有している。これだけの資源がありながら、2000年初めの木材自給率は過去最低の18%程度だったと記憶している。そこからバイオマス発電等の燃料材の国内生産需要が高まり、昨年2020年は48年ぶりに40%を超えたという報道があった。でも、バイオマスで燃やされているだけにすぎない。国産材の供給余力は変わらず乏しいのが現実だ。
輸入木材に頼らざるを得ないのは、日本の林業における深刻な労働力不足がある。当然のことながら、山村での過疎化、高齢化が進んで林業に携わる人材は不足し、製材所の拡大も難しい。生産体制の確立も必要だが、「木の国日本」だからこそ“国産材“を生かした需要が広がるべきではないだろうか。
20年ごとに作り替える“常若(とこわか)”の精神
ひとつ例をあげたい。伊勢神宮の式年遷宮である。式年遷宮とは天武天皇が定め持統天皇の御代(西暦690年)に始まった国家的儀式。原則20年に一度新しい神殿(殿舎造替)に新しい御装束と神宝を整えて、御神体をお遷しする(遷宮)儀式のことだ。1300年以上の長きにわたり原則20年ごとに執り行われている。
なぜ20年に一度なのか、諸説あるが「技術継承説」が腑におちる、20年という周期は人生で2度は遷宮を経験し、次世代に技術を継承するのに合理的である。伝承と継続が目的であった。式年遷宮は、神様は常に新しい神殿でお迎えしなければならないという発想があり、常に新しく造営する。これを「常若(とこわか)」と云うそうだ。
コンクリートや石ではなく、木を使って定期的に作り替える。定期的に作り替えることで永遠の若さが保てるという発想。そうして我々日本人は1300年もの長きにわたり、森を育て、森を守り、森と共に生きてきた、そこには脈々とつながる先人の「木の国、日本」で生きる知恵と、サステナブルの精神がある。
日本の木を使い、木に感謝し、土に還せば、ウッドショックなんて起こり得ない。
「コロナ禍」で改めて気付かされたことがある。成長しなければいけないという現代社会は、物を大量に生産し使い捨てる時代だ。壊れない、無機質の土に還らないものを使い捨て、便利だと勘違いし、ものに感謝しない生活。成長よりも大切なのは継続であるということに。私たちはあえて朽ち果てる木の道具を大切に使い修理し、また作り替えた。そう、江戸時代までは木材自給率100%の時代だった。
日常の吉に気付き、ひと手間かけた丁寧な暮らしをして、日本の木を使い、その木が育ってきた歳月に感謝し、丁寧に長く使い、そして土に還す。みんなが日本の木を使うことで日本の森を豊かにする。そうすれば「ウッドショック」なんて起こり得ない。私たち「箱屋常吉」は少しでも日本の木の良さ・木を使う意味を伝えるため、日々木の箱づくりをし続けていく。